人生で一番うれしかったプレゼントのひとつ
- 40代女性:S.Kさん
- 息子がくれた母の日のプレゼント
それは息子が4歳のときのことです。当時私たち家族は夫の都合で畑と田んぼがひろがる田舎に引越しました。子供も小さく、お店も何もない慣れない田舎暮らし、自然と私は家にこもりがちになり、いらいらを溜め込んでは息子に当たることも多くなっていました。そんな私をよそに、息子は外に出て友達を見つけ、小川で遊び、虫をつかまえ、田舎の暮らしになじんでいくようでした。
そんなある日、息子がにこにこと帰ってきて、後ろに回していた手を私の前に差し出しました。その小さな両手いっぱいにたんぽぽの黄色いかわいらしい花束が握られていました。
「はい、おかあさん、ははのひだよ。プレゼントあげるからわらって。」
私は自分がいっぱいいっぱいでそんなこと忘れていたのですが、その日は、母の日だったのです。息子はお友達に教えてもらったらしいのです。
何かが氷解するように自然と涙があふれました。うれしさと、こんな小さな子に気をつかわせている自分のいたらなさと、いろんな感情がぐるぐるまわって、私はただただ息子を抱きしめて「ありがとう。ごめんね。」を繰り返しました。
次の日、近所の土手いっぱいに咲くたんぽぽを一緒に見に行きました。そのときのタンポポは綺麗にかざり、写真をとって、今でも大切に持っています。それを見ると、苦しいこともなんでも乗り越えられそうな気さえします。人生で一番うれしかったプレゼントのひとつです。